本日の将棋界は公式戦取組みがお休み。
ということで今回は、先週水曜日(1/29)に行なわれました
注目の”ラス前”第78期A級順位戦/8回戦・一斉対局の中から
「佐藤天彦九段-広瀬章人八段」の模様を振り返ります。。
佐藤九段の今期ここまでの成績は
32戦14勝18敗(.438)。順位戦は3勝4敗。
無念の名人陥落後も、ショックは大きく黒星先行。。
A級も優勝争い絡めず残留争いに身を置きます。。
本局で一気に残留を決めるべく必勝を期します。。
対します、広瀬八段の今期ここまでの成績は
38戦21勝17敗(.553)。順位戦は4勝3敗。
広瀬八段もおなじく竜王陥落の憂き目をみましたが
現在は王将戦に挑戦中で、モチベーションは極めて高く
来期の巻き返しを視野に、本局も気合が入ります。。
2手目△3四歩。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: なし
△佐藤九段: なし
気になる両者の対戦成績は
ここまで12戦して、佐藤九段が7勝5敗とリード。
しかし、このところは広瀬八段が3連勝中。。
本局の先手は広瀬八段。
その初手は角道を開く▲7六歩から。
対します、佐藤九段も2手目に同じく角道を開く
△8四歩と返して、対局はスタートとなりました。。
6手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: なし
△佐藤九段: なし
次に両者は息を合わせて飛車先を決め
いざ、「横歩取り」を目指す序盤の出だしに。。
14手目△8六同飛。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩2
△佐藤九段: 歩2
そのまま確立された定跡手順で進行。。
互いに角頭を金で受け、飛車先で歩を交換して
迎えた上図の局面で、広瀬八段は次に。。
15手目▲3四飛。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩3
△佐藤九段: 歩2
2筋の浮飛車で、お隣り3筋の歩をかすめとり
戦型は両者得意の「横歩取り」と決定しました。。
18手目△6二玉。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩3
△佐藤九段: 歩2
「研究将棋」の代名詞で、常に激しい変化が潜む「横歩取り」。
その後手番で現代将棋界最強との呼び声も高い佐藤九段は
3筋に回った先手の飛車先を角で受けると(16手目△3三角)
先手の▲5ニ玉をみて、自らは6筋に玉を構えました。。
この手に、広瀬八段は9筋の端歩を突いて間合いを計ると
次の△2ニ銀をみて、浮かせたままの飛車を突っ張ることなく
じっと引き下げ、相手の出方を窺います((21手目▲3六飛)。。
すると。。
24手目△5ニ玉。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩3
△佐藤九段: 歩2
佐藤九段も浮かせたままだった飛車を
8四の地点に引き下げ、浮かせて構えると(22手目)
6筋に構えた玉を手損覚悟で5筋に寄せる趣向を披露。。
序盤から気の抜けない進行となりますが。。
27手目▲8五歩。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩2
△佐藤九段: 歩2
広瀬八段はさほど時間を使うことなく
後手の浮き飛車を標的としながら位を確保すると。。
31手目▲7六飛。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩
△佐藤九段: 歩2
2筋に回った後手の飛車先を
自陣低くで受けてから(29手目▲2八歩)
自らの飛車を7筋に回し、拠点としました。。
この局面で
午前の対局は終了となり、お昼休憩に突入。。
【 お昼のオーダー 】
広瀬八段: 鶏むね肉のカレー照り焼き弁当
佐藤九段: 豚しゃぶ梅しそだれ弁当(ご飯少なめ)
34手目△4ニ角。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩
△佐藤九段: 歩2
午後の対局開始の一手で
右の銀を8筋に開いた佐藤九段は(32手目△8二銀)
上図で角を引き下げ、左の銀の中央への活用をみせつつ
先手の駒組みをけん制します。。
39手目▲6八銀。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩
△佐藤九段: 歩2
一方、居角のまま自陣に取り込む広瀬八段は
「中住まい」の玉を中止に格調高く「金開き」を完成。。
慌てず騒がず、自らの構想を盤上に描きます。。
53手目▲2七歩。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩
△佐藤九段: 歩3
先行したい佐藤九段に仕掛けを許さず
広瀬八段が懐広く模様を広げた、上図の局面で
夜戦に備えて、夕食休憩に突入します。。
【 夕食のオーダー 】
両者ともに「豚生姜焼き弁当」
57手目▲8六飛。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩
△佐藤九段: 歩3
夕食休憩が明けてもなお
両者は入念に自陣の模様を微調整。。
2二に居た角が、ついに
8筋まで到達した後手に対し(54手目△8二角)
広瀬八段は上図で飛車をその8筋に合わせると
次に、佐藤九段の△7三桂(58手目)をみて。。
59手目▲8四歩。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 歩
△佐藤九段: 歩3
24分の考慮で、しっかり読みを入れ直してから
飛車先の歩を突き出し、ついに仕掛けを決断しました。。
佐藤九段は50分の長考で△同銀(60手目)と応じて
以下、▲3四歩~△同飛~▲3五銀~△同飛に▲8四飛~
△9三銀~▲8三飛成~△7六歩~▲4六銀~△3四飛~
▲8五桂~△同桂~▲同龍~下図74手目△6一金と進行。。
74手目△6一金。
上図での持ち駒
▲広瀬八段: 桂、歩
△佐藤九段: 桂、歩4
一見、均衡のとれた攻防も
確実に主導権を握っていたのは、広瀬八段。
桂交換を成立させつつ龍を生還、攻守に利かせます。。
持ち味である鋭い攻めを封じられ、先攻を許した
佐藤九段はジッと金を引き下げ、終盤戦に備えますが。。
【 投了図・81手目▲6五桂 】
投了図での持ち駒
▲広瀬八段: 桂、歩
△佐藤九段: 桂2、歩3
広瀬八段が盤面右側でも桂交換を成立させつつ
後手飛車の横利きを止めてから、手持ちの桂馬を
狙い澄まして6筋の好所へ投入した、上図の局面で
佐藤九段は為す術を失く、無念の投了を告げました。。
終局時刻は午後10時31分。
思う存分に模様を張り、後手を完封した広瀬八段は
会心の勝利で順位戦成績を5勝3敗としました。。
一方、見せ場なく完敗を喫した
佐藤九段は3勝5敗となり、A級残留はお預けに。。
最終戦は自力残留を目指す、正念場となりました。。
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羽生九段はA級残留決定
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「渡辺三冠-糸谷八段」も明暗くっきり。。
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まずは振り飛車の王道「四間飛車」をご紹介させて頂きます。
今後もカテゴリーを広げて行きますので、よろしくお願い致します。
Source: 柔らかい手~個人的将棋ブログ
最終戦は正念場。。第78期A級順位戦/8回戦「佐藤天九段-広瀬八段を振り返ろう」