将棋界に新年度の幕開けを告げるのはもちろん
歴史と伝統の「春の本場所」第76期名人戦7番勝負。
3連覇を目指す佐藤天彦名人に、羽生善治竜王が挑戦する
大注目の番勝負は11日(水)に運命の開幕を迎えます。。
今回は気になる佐藤名人の直近の対局から
3月2日(金)に行なわれた第31期竜王戦ランキング戦2組
橋本祟載八段との2回戦の模様をご紹介させていただきます。
2手目△3四歩。
上図での持ち駒
▲橋本八段: なし
△佐藤名人: なし
先手は受けが自慢の力戦派・橋本八段。
その初手▲7六歩をみて、佐藤名人も同じく
角道を開く△3四歩と返し、対局はスタート。。
6手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲橋本八段: なし
△佐藤名人: なし
次に両者は息を合わせて飛車を決め
いざ、「横歩取り」を目指す序盤の出だしに。。
14手目△8六同飛。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩2
△佐藤名人: 歩2
そのまま確立された定跡手順で進行。
互いに角頭を金で受け、飛車先で歩を交換した
上図から次に、橋本八段は。。
15手目▲3四飛。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩3
△佐藤名人: 歩2
2筋に浮いた飛車で、お隣り3筋の歩を取り
戦型はケレン味なく、「横歩取り」に決定しました。。
18手目△6ニ玉。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩3
△佐藤名人: 歩2
3筋に回った先手の飛車先を
佐藤名人が角で受けると(16手目△3三角)
橋本八段は玉を立て、「中住まい」に構えます。。
この手をみて
佐藤名人も居玉を解除しますが、あまり見かけない
6二の地点に玉を構えました。。
「後手番最強」と恐れられ
名人奪取の原動力ともなった「横歩取り」は
佐藤名人の得意戦法であると同時に生命線。。
本局もその構想に、大きな注目が集まります。。
26手目△2五飛。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩3
△佐藤名人: 歩2
オーソドックスな金開きに構えた先手に対して
佐藤名人は玉の囲いよりも先に、8五の地点に引いた
飛車をがら空きの2筋へと振り、揺さぶりをかけます。。
この手をみて
橋本八段が▲2七歩(27手目)と受けると。。
28手目△7ニ金。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩2
△佐藤名人: 歩2
佐藤名人は玉の右腹に金を連結し
金と銀とでがら空きの8筋に壁を作りました。。
36手目△2四飛。
▲橋本八段: 歩2
△佐藤名人: 歩2
互いの角が直接対峙したまま駒組みは続き
橋本八段は格調高く、「中住まい」を完成させます。
駒組みが沸点に達した上図で
佐藤名人が飛車を一段引き下げたのをみて
橋本八段も左の金を一段下げ(37手目▲7九金)
間合いを計った、次の瞬間。。
38手目△6六角。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩2
△佐藤名人: 角、歩2
佐藤名人から角交換を敢行。
高らかに盤上へ、いざ開戦を告げました。。
橋本八段は同歩ではなく▲同飛(39手目)で角を払い
以下、△3三桂~▲2六飛~△同飛~▲同歩~△8六歩~
▲8八歩~△9五歩~▲5六角に下図48手目▲1五歩と進行。。
48手目△1五歩。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 飛、歩
△佐藤名人: 飛、角、歩
角に続いて飛車の交換が成立すると
佐藤名人は先手のワイドな角打ちに構うことなく
両サイドの端歩を突き合わせます。。
56手目△2七歩。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 飛、歩2
△佐藤名人: 飛、角
佐藤名人はさらに細かく
歩を利かせながら、先手陣を乱してから。。
60手目△5四角。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 飛、歩4
△佐藤名人: 飛
同じく5筋へワイドに角を投入。。
金と歩の両取りを掛けて先手を取ります。。
64手目△8七角成。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 飛、歩4
△佐藤名人: 飛、歩2
佐藤名人は8筋へ角の成り込みに成功。。
この辺りはさすが、名人のペースかと思われましたが。。
65手目▲6五桂。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 飛、歩4
△佐藤名人: 飛、歩2
しかし、橋本八段が次に桂馬を跳躍させると
盤上は一変し、怪しげに気配に包まれます。。
71手目▲8四歩。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 飛、歩
△佐藤名人: 飛、歩3
逆襲に転じた橋本八段も歩を利かせて
まずは8筋の銀を吊り上げると(72手目△8四同銀)。。
73手目▲8三飛。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩
△佐藤名人: 飛、歩4
重戦車・橋本八段はドスンと
手持ちの飛車をこじ開けた敵陣8筋に投入。。
この手をみて、佐藤名人も飛車を8筋に打ち込み
銀取りを受けますが(74手目△8六飛)。。
75手目▲5三桂成。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩2
△佐藤名人: 歩4
橋本八段は返す刀で桂馬を跳躍。。
敵陣に軽やかに飛び込む王手から、勝負に出ます。。
佐藤名人は△同銀(76手目)で桂馬を払い、以下
▲7ニ歩成~△同金~▲8一飛成~△5五桂に▲3一龍~
△6七桂成~▲同角~△6五歩~▲4九玉~△6六歩をみて
下図87手目▲2三角成と一方的に進行。。
87手目▲2三角成。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 金、桂2、歩2
△佐藤名人: 銀、歩6
敵陣で気持ちよく駒を捌いた
橋本八段は玉の早逃げで安全を確保してから
悠々と角も成りこみ、形勢を大きく掴みました。。
【 投了図・107手▲6四桂 】
投了図での持ち駒
▲橋本八段: 角、金、銀、桂、歩
△佐藤名人: 飛、角、銀、桂、歩6
終盤で伸び伸びと手が伸びた先手とは対照的に
佐藤名人は精彩を欠き、橋本八段が寄せに入った
上図の局面で見せ場なく、無念の投了を告げました。。
得意の「横歩取り」で喫した黒星で
佐藤名人は早々と「冬の本場所」竜王戦挑戦への
道が閉ざされ、文字通りに痛恨の一敗となりました。。
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第68回NHK杯がスタート
1回戦で夢のカードが実現。。
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前期は力戦派の英雄が優勝
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詰将棋界最大の祭典
第15回詰将棋解答選手権に神童登場
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名人戦は11日(水)開幕。。
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「将棋界の一番長い日」は劇的なフィナーレ。。
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Source: 柔らかい手~個人的将棋ブログ
名人は、今。。第31期竜王戦2組/2回戦「佐藤名人-橋本八段を振り返ろう」